私には、祖父に先立たれて一人暮らしの祖母がいました。祖母は生前、物を溜め込む性格だったので、家の中は缶詰やペン、通販で買ったアクセサリーなど物で溢れ返っていました。
祖母が亡くなり、遺品整理も兼ねて家の掃除を開始。キッチンから未開封のまま、購入して数年は経ったであろう食用油が何本も出てきて処分に困っていたところ、近所のホームセンターで廃油を回収していることを知り、トラックの荷台に10本近く積んでそのホームセンターへ向かいました。
ホームセンターの店員に声を掛け、廃油を回収してほしい旨を伝えると快く引き受けてくれました。トラックから持ってきた廃油を店員へ引き渡そうとしたところ、店内で買い物していた一人の女性が私と店員の会話に割り込んできました。
先程の会話を聞いていたようで、私たちが持ってきた未使用の油をタダで貰いたいとのこと。困惑しつつも私が何年も前に買ったもので廃油としてここに持ってきたことを話してもその人はしつこく食い下がってきました。店員も同じ説明をし、もしもその油を使用して健康被害に遭われた場合、責任を持てないと言ってもその人は「文句なんか言わない!それだけあれば一年は油買わなくて済むしちょうだいよ!」としつこく、その手は既に油を1本抱えようとしていました。
なかなか引き下がらないその人に困っていると、店員がおもむろに試しに1本開封しました。すると食用油とは言えない臭いがしました。時間が経って酸化してしまった油とはまた少し違う、とっくの昔に賞味期限切れだったのだと臭いだけどわかりました。
思わず眉間にシワが寄り、流石にこれは渡せないなと思いその人をちらっと見ると、その人は不機嫌そうに顔をしかめて「そんな臭い油いらない!」と足音を立てて去っていきました。あっさりと引き下がった姿に店員と呆然としつつ、廃油として捨てるくらいなら無料でもらおうとする姿勢に少し恐ろしくなりました。

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